月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

改正後の事業承継税制

2018-05-01

平成30年度税制改正において、

事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する

事業承継税制が大きく改正され、

10年間限定の特例措置が設けられました。

要点をまとめてみます。

【1】適用要件

特例の適用を受けるためには、以下の2点を満たすことが必要です。

(1)平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、

 都道府県庁に「特例承継計画」を提出すること。

(2)平成30年1月1日から平成39年12月31日までに、

 贈与・相続(遺贈を含む)により自社の株式を取得すること。

内容的には下記になります。

【2】対象株式数・猶予割合の拡大

(1)対象株式数の上限を撤廃し全株式を適用可能に。

(2)納税猶予割合も100%に拡大することで、承継時の税負担ゼロに。

【3】対象者の拡大

親族外を含む複数の株主から、

代表者である後継者(最大3人)への承継も対象に。

中小企業経営の実状に合わせた、多様な事業承継が支援されます。

【4】雇用要件の弾力化

(1)現行制度では、事業承継後5年間平均で、
 
 雇用の8割を維持することが求められています。

 仮に雇用8割を維持出来なかった場合には、

 猶予された贈与税・相続税の全額を納付する必要があります。

(2)改正後は制度利用を躊躇する要因となっている雇用要件を

 実質的に撤廃することにより、雇用維持要件を満たせなかった
 
 場合でも納税猶予を継続可能に。

(※雇用維持が出来なかった理由が経営悪化又は正当なものと

 認められない場合、認定支援機関の指導・助言を受ける必要がある。)

【5】新たな減免制度の創設等を行う。

(1)現行制度では、後継者が自主廃業や売却を行う際、

 経営環境の変化により株価が下落した場合でも、

 承継時の株価を基に贈与・相続税を納税するため、

 過大な税負担が生じます。

(2)改正後は売却額や廃業時の評価額を基に納税額を計算し、

 承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免

 経営環境の変化による将来の不安が軽減されます。

【6】事前準備が重要

 仮に改正後の贈与税を適用する場合には

 受贈者は20歳以上で、引き続き3年以上にわたり役員で

 あることが求められます。

 つまり役員就任後3年経過しないと事業承継税制の

 適用が受けられません。

 10年は長いようで短いです。制度の詳細を理解して早めの準備が必要です。


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