月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

給与と外注費の違い

2019-10-01

令和1年10月1日から消費税が8%→10%に改正されました。

事業者が支払う金額のうち個人に対して支払う金額が

給与なのか外注費なのかにより消費税の取扱いが変わります。

税務調査においても注目される点なので確認してみましょう。

【1】事業者の経理処理

(1)どちらも経費

 給与も外注費も事業者が実際に支払うものなのでどちらも

 経費になります。事業者の損益計算上に違いはありません。

(2)消費税の取扱い(「課税仕入れ」になるか)

  ①給与
  
  消費税は「課税仕入れ」にはなりません。なぜならば、

  事業者間の取引ではなく、個人が雇用契約に基づき他の者に従属し、かつ、

  その者の指揮命令のもと役務を提供する場合は、事業に該当しないからです。

  ②外注費

  消費税は「課税仕入れ」になります。なぜならば、

  請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づいて受ける役務の提供の対価となるので
 
  事業者間の取引となるためです。

  ③何が変わるか

  消費税の納税額は原則的に

  「受取った消費税 ― 支払った消費税 = 消費税の納税額」

  となります。そして、

「外注費になる=課税仕入れになる=支払った消費税が増える」となり

 結果、消費税の納税は少なくなります。

つまり、単純に支払額が同額という前提であれば、

給与としてではなく、外注費として支払った方が、

消費税の納税額は少なくなります。

  ここに問題が潜んでいます。

【2】給与と外注費の線引き

(1)外注費となるもの
 
  形式的に契約書があれば外注費になるというようなものでなく、

  その区分が明らかでないケースも多く、その場合は「業務の実態」に応じて、

  判断を行うことになります。

  税務上は「形式上」+「下記事項」を総合勘案して判定することになります。

 ①他人と入れ替わることができるか。

  外注は入れ替わることができます。

 ②外注先が自ら請負金額を計算し、請求書を発行しているか。

  請求書等もなく、請負金額も発注元が時間を単位として計算して支払っている

  場合は雇用関係があるとみなされる可能性があります。

 ③役務の提供に当たり事業者の指揮監督命令を受けるかどうか。

  指揮監督命令を受けないのが外注費となります。

  外注であれば業務の進行や手順について自由に決められます。

 ④引渡し前に完成品が不可抗力のため滅失したら報酬はどうなるか。

  外注は請求できません。

 ⑤業務に必要な材料、用具等を供与されているか。

  外注は自ら持ち込みます。
  
(2)実態で外注費判断

  基本的には上記の内容で判断をしますが、実際には業種によって材料を支給

  されたうえで業務を行ったり、指揮監督命令のもとで業務を行うこともあります。

  したがって、給与か外注費かの判断は必ずしも上記の基準のみで判断するのではなく、

  個別の契約内容、業務実態に応じて総合的に判断することになります。

【3】税務調査で外注費を給与認定された場合

 (1)消費税の問題

  消費税の追加納付が発生する事になります。

 (2)源泉所得税の問題

  給与には源泉徴収が必要になるので

  源泉所得税の不徴収による追徴が発生します。

 (3)罰金の問題

  過少申告加算税、延滞税が課せられます。

  
【4】まとめ

 消費税が2%増税され今後事業者の消費税負担は増大します。

 できれば預り金的性格の消費税は納税の時期に合わせて別途

 貯めておければよいのですが、資金繰り上厳しい場合もあります。
 
 だからといって実態が伴わない処理をして、後でより多い税金納付
 
 とならないように注意しましょう。 

 山口会計 山口

 

多摩エリアで創業50年超の山口税務会計事務所。 八王子市・立川市・多摩市に接する日野市(JR中央線豊田駅から徒歩5分)の税理士事務所です。 認定支援機関ならではの各種優遇税制、事業承継税制を積極的に活用した税理士業務・会計サポートが特徴で、中小企業経営者のお客様に好評をいただいております。日々奮闘している所長税理士とスタッフが、皆様の開業・起業、相続、その他税務のご相談をお待ちしております。
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