月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

名義財産とは

2023-12-19

相続税の申告の際に特に注意をしなければならないのが

名義財産です。掘り下げてみましょう。

【1】名義財産とは

 名義財産とは、名義預金や名義保険が代表的です。

 名義預金・名義保険は共に、被相続人(亡くなった方)がお金を出して、

 孫名義や相続人名義の預金通帳や保険契約をする事です。

 では、何が問題になるのでしょうか。

 相続が発生した場合、被相続人の財産の洗い出しをします。

 上記のような名義財産があった場合、

 名義が違えど被相続人の財産として申告する必要があるからです。 

【2】よくある名義預金の例

 (1)子供名義の預金残高

  相続対策として父親が子供の名義で預金通帳を作ります。

  その後毎年、暦年贈与の基礎控除と同額(またはその金額以内)の110万円を父親が入金します。
 
  その後、10年後に父が亡くなり、相続が開始したとします。

  その際子供がそのような預金の存在を知らず、相続の際に初めて自分名義の預金残高を認識した場合

  税務署は1100万円の預金残高をまるまる相続財産と指摘します。

  父親は子供に贈与していたつもりが、父親自身の財産とされてしまうのです。

  受取った本人がその事実を知らないような場合は、贈与にならない可能性が高いため、

  注意が必要です。

 (2)妻の預金残高

  妻が夫の口座を管理し、そこから自分の名義に入れている預金についても同じことが言えます。

  妻自身に収入があったり、過去に贈与の事実や申告が確認できる、ということがないと、

  税務署は、夫の預金を妻の名義で管理していただけとして、名義預金の判定を下す可能性が高いです。

  へそくり、内助の功の分だから、という話は、離婚の財産分与ではないので、

  税務署では認めてもらえません。

  もちろん妻・夫の働き方が逆の場合も同様です。

【3】名義保険の例

  親族名義の生命保険で被相続人が保険料を負担していたような保険契約の場合、

  保険料を負担していた被相続人の財産として認識されます。
 
  保険料が被相続人の口座から引落されているような場合が該当します。

  対策として、まずは保険料相当額を、被相続人から相続人に贈与します。

  この保険料相当額の贈与は税務署に贈与と認められる形でしなければなりません。

  正式な贈与で受けた保険料相当額を相続人の口座から保険料として払う契約にします。

【4】名義財産か贈与財産かの判断

 (1)名義財産となるかどうかは、

   その原資の出資者は誰か、

   取引や口座開設の意思決定やその手続を誰が行っているか、

   その管理又は運用による利得を収受していたのが誰か、

   といった点が重要となります。

 (2)名義財産ではなく、過去に贈与を受けたものであると判断する場合は、

   いつの時点でどのように贈与が行われたかを明らかにすることが重要です。

【5】名義財産とみなされないためには

 (1)贈与契約書を作成する

  贈与の成立に必ずしも贈与契約書は必要ではありません。

  しかし後に贈与の事実があったか否かの争いにならないように贈与契約書を作成し、

  贈与の事実を残すことが重要です。

 (2)贈与税の申告・納付をする

  その贈与契約書に基づいて、さらに贈与税の申告を行うことで、

  明確に贈与の事実を残すことができます。

 (3)贈与後の財産の管理・処分は受贈者に任せる

  贈与した財産の管理・処分を贈与を受けた人に行わせることで、

  その贈与を受けた人において贈与を受けた認識があったという事実を

  より印象強く残すことができます。

 
  相続税申告後の税務調査などでも上記の名義財産についての確認は必ず行われます。

  事前準備が重要です。

   
  山口会計 山口

多摩エリアで、創業50年超の業歴を誇る山口税務会計事務所。八王子市・立川市・多摩市に接する日野市(JR中央線豊田駅から徒歩5分)の税理士事務所(認定支援機関)です。 税理士業務・会計サポートで中小企業経営者のお悩みを伺っております! 日々奮闘している所長税理士とスタッフが、皆様の開業起業、相続その他税務のご相談をお待ちしております。
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