月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

相続の放棄の活用

2023-11-10

相続の放棄というとなんとなくマイナスのイメージがありますが、

視点をかえると活用できるケースがあります。確認してみましょう。

 

【1】相続の放棄とは

 「相続放棄」とは、被相続人(以下「亡くなった人」)の資産と負債を
 一切相続しないという意思表示です。
 相続放棄を行うと、初めから相続人ではなかったものと見なされ、
 亡くなった人の資産も負債も一切承継しないことになります。
 なお、相続放棄は原則として、相続の開始を知ったときから
 3カ月以内に行わなければなりません。

 

【2】どのような場合に相続放棄を選択するか

(1)借金などの負債を相続したくない場合 

 相続放棄は、特に亡くなった人が多額の借金を負っていた場合に効果的です。
 借金などの負債を一切相続せずに済むため、マイナスの財産を引き継ぐ事態を回避できます。

 

(2)次順位の人に相続させたい場合

 相続順位を進ませたい場合に相続の放棄が活用できます。
 例えば、父の死亡時に父の財産を相続していた長男(独身)が亡くなった場合、
 子のない長男の相続人は母になります。そうすると、親(父)から子(長男)
 へ相続されていた財産が親(母)に戻り、その後母が死亡した時は再び
 子(長女)に相続されることになります。
 この場合その都度相続税や登録免許税等が発生する可能性があります。
 そこで長男の相続の時に母が相続放棄をすると、次順位の長女が相続人となり
 税負担が軽減される可能性があります。
 ただし長男の兄弟姉妹が相続する場合には相続税が2割増しになる制度も
 あるので、総合的に比較した上で検討しなければなりません。

 

(3)遺産分割協議に参加したくない場合

 親族同士が揉めていないとしても、遺産分割を行う際には、協議・合意書面の
 作成・名義変更手続きなどに多くの手間がかかります。
 面倒な遺産分割手続きに煩わされるのが嫌だという場合には、
 相続放棄をするのも一つの選択肢かもしれません。

 

(4)相続トラブルに巻き込まれたくない場合

 遺産をめぐる親族間の争い、いわゆる「争族」に巻き込まれたくない場合にも、
 相続放棄が有力な選択肢となります。遺産の相続を諦める代わりに、
 ストレスの大きな相続トラブルに関わることを避けられます。

 

【3】相続放棄しても適用が受けられる制度

(1)死亡保険金の受取

 生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産と解されています。そのため、
 ご自身が受取人に指定されていれば、相続放棄をした場合でも受け取れます。

 

(2)遺族年金や未支給年金の受け取り

 亡くなった人の死亡を機に受け取ることができる遺族年金や未受給年金は、
 遺族固有の財産と解されているため、受給権者に該当すれば、
 相続放棄をした場合でも受給できます。

 

【4】相続放棄の主な留意点

(1)死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えない

 相続人が受け取った死亡保険金と死亡退職金には、
 それぞれ「500万円×法定相続人の数」という相続税の非課税枠が設定されています。
 受け取った金額が上記の金額に達するまで、
 死亡保険金にも死亡退職金にも相続税がかかりません。
 ただし、上記の非課税枠は相続人に限って適用され、相続放棄をした者には適用されません。
 結果的に、相続放棄によって死亡保険金や死亡退職金に課される相続税が増えてしまう
 可能性があります。

 

(2)債務控除

 相続税の計算上、相続人や包括受遺者は相続財産から亡くなった人の債務を
 控除することができますが、相続を放棄した者は控除することができません。

 

 相続放棄の申述先は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
 そして期限は前述したように3カ月以内とかなり短期間です。その間に上記のことを勘案
 して判断しなければなりません。より的確な判断をするためには早期に専門家に
 相談することをお勧めします。

 

 山口会計 山口

 

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