月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

成年後見制度でできることできないこと

2022-02-03

最近成年後見制度を利用する方が増えてきました。

この制度で「できること」「できないこと」を簡単に

整理してみたいと思います。


【1】成年後見制度とは

 認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、

 財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続など)や

 身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結、

 履行状況の確認など)などの法律行為をひとりで行うのが難しい場合があります。

 このような判断能力の不十分な方々を法的に保護し、支援するのが成年後見制度です。
 
 成年後見制度には、法定後見制度の他、任意後見制度があります。

 

【2】法定後見制度とは

 ご本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所によって、

 成年後見人等が選ばれる制度です。ご本人の判断能力に応じて

 「補助」「保佐」「後見」の3つの制度が用意されています。

 

【3】任意後見制度とは

 ご本人に十分な判断能力があるうちに、判断能力が低下した場合に備えて、

 あらかじめご本人自らが選んだ人(任意後見人)に、

 代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。

 

【4】成年後見制度でできること

 (1)本人の預貯金の管理・解約

 (2)本人名義の居住用不動産の処分(事前に裁判所の許可が必要)

 (3)保険金の受取

 (4)遺産分割などの相続手続き

 (5)日常的な生活費の送金、日用品の購入等

 (6)施設の入所・退所の手続きや介護保険等の手続き、病院の入退院等の

   手続きなど

   ただし、身の周りの世話など本人の介護をすることはこの制度に含みません。

 (7)本人が行った法律行為の取り消し

   買い物など日常生活上の行為以外で、

   たとえば、必要のない家のリフォーム契約を悪徳業者と結んだ場合など

 

【5】成年後見でできないこと

 (1)本人名義の現金や預貯金を成年後見人や本人以外の人(以下、後見人等)

   が自分の生活費等のために使うこと

 (2)本人に代わって株や債券等を運用すること

 (3)本人所有の財産を借りたり、贈与したりすること

 (4)本人名義の不動産および株式・債券等を後見人等の名義にすること

 (5)手術・延命処置など医療について同意すること

    (ただし、後見人が親族以外の場合)

 

【6】基本的考え方

 上記の業務は実務的には後見人が行う業務になります。

 後見人は、あくまで「本人のために」仕事をする立場です。

 本人に判断能力がなく、意思を確認することが難しい場合であっても、

 可能な限り本人の希望をくみ取って仕事をしなければなりません。

 

【7】成年後見人になる方

 現状配偶者や親兄弟などの親族が成年後見人に選ばれている割合は3割以下で、

 弁護士や司法書士などの専門職や市民後見人が成年後見人に選ばれるケース

 が7割を超えています。ただし 2019年に、最高裁判所が「後見人は家族が基本」

 とする旨の報告を行いました。

 今後は家族が後見人になるケ-スが増加すると思われます。

  山口会計 山口

 

【以前の成年後見人制度についての記事はこちら】

成年後見制度

成年後見制度②

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