月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

副業300万問題!!

2022-11-07

副業収入が300万円を超えない場合は事業所得ではなく雑所得

とした国税庁の通達案に反対意見が殺到し、

大幅に修正されることになりました。

 

【1】修正前の内容

 国税庁が8月に出した元の通達案は

 「会社員の副業収入が300万円を超えない場合は事業所得ではなく雑所得にする」

 というものでした。

 

(1)なぜこのような通達案を出したのか

 会社員の副業をめぐっては、副業収入を事業所得にして副業を赤字計上し、

 本業の給与所得と損益通算して節税する申告が多数見受けられたようです。

 そこで雑所得か事業所得なのか基準を明確にして対応を図りました。

 事業所得は損益通算できるが、

 雑所得に区分されれば他の所得と損益通算できなくなるからです。

 また雑所得は、確定申告で最大65万円の特別控除を受けることができる

 「青色申告特別控除」が使えないなど節税効果も少なくなります。

 

(2)世間の反応

 ①300万円の基準が不明確
 
 ②会社を辞めずに起業した人は収入が300万円を超えない場合が多いが、これも雑所得なのか
 
 ③収入金額300万円は大きすぎる

 ④副業を推進する政府の方針に逆行する

  などの意見が出ていました。

 

【2】修正後の内容

 国税庁が10月7日に公表した修正案では本業か副業かは問わず、

 所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存すれば、

 事業所得と認められることになりました。

 300万円の基準は実質的にはなくなった形になります。

 新しいルールは2022年の所得分の確定申告から適用される見通しです。

 

【3】事業と認められる条件

(1)「社会通念上事業と称するに至る程度」の規模があること

 具体的には下記の要素から全体的に判断します。

 ①営利性、有償性があるか

 ②自己の責任と計算で営んでいるか

 ③継続・反復して営んでいるか

 ④取引に費やした精神的・肉体的労力の程度がどれくらいか

 ⑤人的・物的設備があるか

 ⑥取引の目的

 

(2)「主たる所得」でなくてもよい

 いくつかの業務を同時並行で営んでいるケースもあるため、

 その所得がその者の主たる所得でない場合も他の要件を

 を満たせば事業と認められることになります。

 
(3)収入金額が300万円超の基準がなくなる

 修正後、収入金額についての要件がなくなりました。

 

(4)「帳簿書類の保存」が追加された

 修正前は「帳簿の有無に関係なく副業の年収300万円以下ならすべて雑所得」でした。

         ↓

 修正後は「副業」「年収300万円」がなくなりました
         ↓
  
 「取引の実態を見て事業所得か雑所得か」を判断することになりました。

 事業所得のわかりやすい判定基準として「帳簿保存」が示されたのです。

 極端に言うと「帳簿さえあれば基本的に事業所得」となります。

 

【4】副業の赤字の損益通算問題!!

 今回の通達改正の目的は

 「赤字の副業を事業所得で申告して給与所得と損益通算をし、

 還付申告をする」このスキームを防止する目的があります。

 今後の税務調査では副業の事業認定がさらに重要視されます。

 つまり事業としての要件を満たさなければ、

 「帳簿保存があろうがなかろうが節税目的の副業は雑所得」

 とされ損益通算はできなくなります。

 
 事業を開業するのであれば「人・物・金」をそろえて自己の責任において
 
 反復継続して行う必要があります。

 もちろん帳簿作成は大前提です。

  山口会計 山口

 

 

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